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マーカス・ヒルトンMBE

「これ程すばらしいものはない-(→ - )世界最良(→最高)のオーケストラに支えられた世界最良(→最高)のダンサーたち。すごい!」

「一言で言うなら、現在世界最良(→最高)のオーケストラだ」


「一言で言うなら、現在世界最良のオーケストラだ」

ピーター・マックスウェル


「まさに驚くべき音楽だ。ブラックプールに来るようになって何年にもなるが、このオーケストラは、他のものとは(→とは)全く比べ物にならないくらい素晴らしい」

ケニー・ウェルシュ

 

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ダンスウイング51号

 

最後に裏話を少し・・・

オン・ステージ 私にとってステージに立つことは、一番簡単で、かつ、一番やりがいのある仕事です。世界的に崇められているダンスの人達、それに、ダンスに精通している観客の前で繰り広げられる世界のトップ・ダンサー達の熱戦。その間中、世界的なオーケストラの前に立つことができるのは最高の気分です。心から、この仕事が大好きです。

オーケストラの指揮にも様々な側面がありますが、私が最も気をつけているのはテンポを保つ事です。テンポが外れそうになるとすぐに分かりますが、それでも念のためメトロノームは使います。今年はテンポの決定権が私に一任されました。初めての事です。私の知る限り、いままでこのような重要な決定権を与えられた音楽監督はおらず、通常、審査委員長の介入があるのです。この歴史的な瞬間、私はかなりの解放感を感じました。

ブラックプールの期間中、私はスタンダードとラテンの9種目の中で、パソ・ドブレだけはブリティッシュ・ダンス・カウンセルのハンドブックに記載されている規定テンポで演奏してきました。今年は、チャチャチャ、サンバ、フォックストロット、タンゴ、それにクイックステップにも、より一層の変化をつけました。ダンサーにメリットがあると考えたからです。その結果、出場者からも運営委員会からも、それに観客からも良い反響がありました。主だったコメントとしては、音楽をよりエキサイティングに演奏したことにより、さらにダンスが刺激的なものとなり、フロアーの表現がさらに解放感溢れるものとなったということです。

こういったイベントでオーケストラを指揮する難しさは、今演奏しているその曲に、演奏者たちを集中させることです。と言いますのも、一般に英国の音楽家は1日2〜3時間の仕事なのですが、ブラックプール期間中は1日12時間半にも及ぶことがあるからです。これは、時に、へとへとに疲れてしまうスケジュールです。音楽家には一人一人違った個性があり、モチベーションの上げ方も様々ですから、私はよく声を出すようにしています。励ましたり、賞めたり、刺激を与えるような言葉を発したり、瞬時に集中力が必要な時には叫ぶ事もあります(短くてきつい言葉で、いわゆるショック療法的なものです)。しかし、疲れ切っている時には、なんといっても、ユーモアが一番効果的です。

私とマーカス(ヒルトン)は常に連絡を取り合う親しい仲です。私生活での彼は、時々ひどいジョークを言ったりしますが(サッカーのマンチェスター・ユナイテッドのサポーターですから仕方ないです)、ステージにいるときとなんら変わらない、とてもいい人です。彼は私の仕事は簡単だと思っているようですが、私は、彼の仕事の方が簡単だと思っています。まあ、私がステージ上の彼の仕事を奪う訳にもいきませんので、彼に私の仕事を体験させてあげることがしばしばあります。何度か、発表の前に演奏される“ジャーン”の部分を指揮させた事がありますが、それは無残なものでした。今年はギロ(ギザギザのついた表面を棒でこすって音を出す打楽器)にも挑戦していましたが、まだまだ先は長いです。

冗談はさておき、私は、彼が審査委員長として任命されたのは大変良い判断だったと思いますし、もとはと言えば、彼とカレンのダンスに触発されて私は音楽監督の仕事をしたいと思ったのですから。サンドラ・ウィルソンさん(フェスティバル・オーガナイザー)からピーター・マクスウェル氏の後任に適切な人を尋ねられた時、マーカス以外、私には誰も思い浮かびませんでした。彼こそ真のチャンピオンです。

オフ・ステージ
オーケストラには、激務の間にちょっとリラックスできるよう、ステージの後ろ上部に専用の控え室があります。このオーケストラは素晴らしいミュージシャンの集まりですが、彼らのユーモアのセンスも並大抵ではありません。他ではちょっと見られないでしょう。よって、バンド・ルームの中はハチャメチャに可笑しいです。

フェスティバルの期間中、役員には3つの部屋が用意され、その一つを私が使っています。一部屋目は審査員用で、今年は予選の合間にジェンガ大会が開かれていました。私はドアからひょいひょい覗いて見ていましたが、競技生活から何年離れていても、誰も「競争心」を失っていないのはいいものだと思いました。今にも崩れそうなジェンガの山からひとつを抜く状況になると、勝ちたい気持ちは昔のままで、部屋は緊張感でピーンと張りつめていました。

二つ目の部屋はマーカス・ヒルトMBE、サンドラ・ウィルソンさん、ブライアン・アレン氏、そして業務係と開票検査の人達用です。私は自分の部屋を抜け出し、時々この部屋で過ごしました。

フェスティバル・チームの中心人物は毎年同じ顔ぶれなので、この部屋は友情で結ばれ、プラス思考で仕事をする環境になっています。ここでの会話の内容は広く多岐にわたりますが、それでも中心は、なんといってもダンスと音楽です。大会期間中にアルバム、「オールウェイズ&フォーエバー」が発売されたこともあり、大会中は頻繁に(少し頻繁すぎた気もしますが)アルバムの曲を演奏しましたので、会話は否応無しにCDの話になりました(ブラックプールのオーケストラがアルバムをリリースするのは10年ぶりでしたので、その意味でも新鮮な話題でした)。そこで持ち上がったのが、なぜアルバムにパソ・ドブレの「エスパーニャ・カーニ」を入れなかったのか、また、その曲は世界中のフェスティバルや競技会で他のオーケストラもよく演奏しているのに、なぜ私はあまり演奏しないのかということでした。

答えは極めて単純です。私自身、その曲は好きですが、ほかにも沢山エキサイティングなパソ・ドブレの曲があるからです。

世界最高のダンスフェスティバルと言われるこのダンスフェスティバルでの私の仕事は、単に音楽を演奏することではありません。観客が聴き入るような音楽、ダンサーが自分のために演奏されているのだと感じる音楽、そうした事にも挑戦していきたいと思っています。私の新しい曲は以前のものとは色々な面で少し違っていますし、中にはまったく違ったスタイルもあります。

作曲形式はいつも伝統に則っているとは限りません。時に、イントロに5小節とか8小節しか使わないこともありますが、音楽をしっかり聞いているダンサーならうまく合わせることができることでしょう。ダンス同様に音楽にも自然な流れというものがあるので、いつでも16小節区切にするということもしません。自然でなくなってしまいますから。

周り全体を意識できるダンサーは音楽の機微を感じ取り、ルーティーンを合わせたり、即座に変更したりできると私は思っています。審査員の人達はただテクニックや振り付けを見ている訳ではなく、芸術的な才能の部分や個性、そして人間性も見ていることを忘れないで下さい。

ダンスウイング前号の付録DVDの中で、アン・ラクスホルムさんが、「より人間らしく」というタイトルで、素晴らしいレクチャーをしていますが、まさにその点こそが、私が作曲する時にも心がけていることです。

音楽家として(ダンサーも同じですが)頂点を目指す場合、高度なテクニックは不可欠です。ソリストとしての私は音楽の中の美を探し求め、音楽から私が感じることを、パフォーマンスを通じて伝えるようにしてきました。私にとって音楽とは、能力とリンクしたときにできる自己表現であり、あるいは、情熱や感情の表現であり、そこに最高の技術が伴う事で演奏は更なる高みへ昇華できるものと考えています。

そうしたことすべて持ち合わせている人はとても稀で、世界チャンピオンとは言えども、皆が持ち合わせている訳ではありません。

故ビル・アービンMBEは実に上手い表現をされていました、「ダンスにはまず音楽ありきだ。自分の最高のものを、音楽に引き出して貰いなさい。」 — と。

オーケストラの生演奏で踊るダンスは最高ですが、これもブラックプールの特徴の一つです。毎年ブラックプールにやってこられる何千人ものダンサーや観客の人達が、私たちの音楽から自分たちの最高のものを引き出す、そのお役に立てていることを願ってやみません。 (おわり)